時事通信社 厚生福祉 2005年3月8日号

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時事通信社 厚生福祉 2005年3月8日号
時事通信社 厚生福祉 2005年3月8日号記事
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地域を支える(489)
薬剤師の荒居英郎さん(四二)が開業した「薬局アットマーク」は、一般の薬局では市販されていない医療用医薬品を医師の処方せんなしで販売することをうたう日本で初めての薬局として、二〇〇一年十月にオープンした。厚生労働省や新潟県が「違法ではないが、好ましくない」と困惑する中、仕事で病院に行く時間がない利用者などから支持を集め、客足を伸ばしている。

通常、医療用医薬品を購入するには医師の処方せんが必要となる。しかし、薬局アットマークでは風邪薬やステロイド軟こう、アレルギー、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)の薬、老化防止に効果があるといわれる物質「コエンザイムQ10」を含む強心剤など約六百五十種類の医療用医薬品を購入できる。医療用医薬品であっても、副作用の恐れなどから「要指示薬」に指定されていなければ、処方せんなしで販売しても罰せられない「法律のすき間」があるためだ。

荒居さんが新業態の薬局開業を思い立ったのは、同県内の調剤薬局での勤務がきっかけ。「やっと仕事を休んで行った病院で、処方せんをもらうのに半日かかった」「いつもの緑内障の薬が切れそうだが、売ってもらえないか」といった訴えを耳にした荒居さんは、処方せんなしでの販売に対する切実なニーズを実感。法律を勉強して「すき間」を見極め、数万種類ある薬の中から要指示薬ではない薬を調べ上げた上で、患者の負担軽減を目指し開業に踏み切った。

医療用医薬品は市販薬より効果が高く、値段も比較的安いものが多いという。効き目が強い分、副作用の心配もあるため、完全会員制として販売に際して薬に関する丁寧な説明を心掛けるとともに、病院が発行する薬手帳を確認して不適切な飲み合わせ防止に配慮している。また、入会時に副作用が起きた場合の免責を了解してもらい、自己責任を原則としている。全く新しい業態のせいか、開業当初は利用者が思うように伸びなかったが、処方せんなしの利便性をよく知る看護師や同業の薬剤師、医師らも訪れるようになり、会員数は約千五百人にまで増えているという。

これに対し、国や県は「薬事法の精神には反するが、罰則はない」と渋い表情。県医薬国保課は 「医療用医薬品は医師が患者を診察・経過観察し、処方せんで指示した範囲内で便われるべき」と指摘し、同様の薬局が開業すれば「(販売しないよう)指導していきたい」と話す。厚労省は四月の改正薬事法施行に合わせ、販売中止を指導する立場をより鮮明に打ち出すことを検討中だ。一方の荒居さんは「医師による無診察での処方せん交付(五十万円以下の罰金)が放置されているのに、違法ではなく、医療費の節約にもつながるこちらだけを問題視するのはおかしい」と反論する。

荒居さんは薬事法改正に伴う「処方せん医薬品」(現行法の要指示薬)の指定作業を注視してきた。処方せんなしで販売できる薬が減れば、薬局の存続が難しくなるためだ。しかし、二月上旬に結果が公表され、「売れ筋の薬が一部販売できなくなるが、営業自体に問題はなかった」と胸をなで下ろした。荒居さんによると、「宣伝はせずに医療用医薬品を販売する薬局は増えつつある」という。法のすき間を突いた新しい薬局の行方が注目される。

(高橋俊昭=新潟支局)


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