財界にいがた 2005年6月号

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財界にいがた 2005年6月号
財界にいがた 2005年6月号記事
財界にいがた 2005年6月号記事

国会を騒がせた、新潟市の“新機軸”薬局
新潟市で営業する1件の薬局が、国会で審議された改正薬事法において焦点になった。医療用医薬品を“処方箋なし”で販売する薬局の運命やいかに?

薬事法改正で危機?
“お医者さんの出す薬、欲しくはありませんか”

こんな看板を掲げている薬局が新潟市米山にある。

“医療用医薬品(病院でもらう薬)は、医師の書いた処方箋なしでは手に入らない”と思っている読者がほとんどではないだろうか?

入手にあたって医者の処方箋(指示)が必要な医薬品は、これまで「要指示医薬品」と呼ばれてきた。

これに対し、医者の指示がなくても販売できる医療用医薬品というのは意外に多く存在する。

貼り薬、塗り薬、ステロイド軟こう、アレルギーの薬、水虫の薬、咳止め・鼻水・痰の薬、胃・十二指腸潰瘍の薬、整腸剤、漢方薬、使秘薬、ビタミン剤、目薬など。

ここに目を付けたのが、新潟市の『薬局アットマーク』。薬剤師兼オーナーの荒居英郎さんは、もともと病院の脇に軒を並べる調剤薬局の薬剤師。同薬局を開業したのは平成13年。

同薬局では、これら法律上では“売ってもいいことになっている”医療用医薬品を扱っている。まさに法律のグレーゾーンをついたうまいやり方だが、一般にとっては実に利用価値が高い。

例えば、ちょっと風邪をひいたりしたとき、市街の薬店・ドラッグストア等で扱っている市販薬(OTC)よりも、やはり成分量が多く、効き目の強い医療用の風邪薬のほうが頼もしい。しかし、多忙な人などは、医者にかかって何時間も待たされるのは億劫である。

また継続的に病院にかかっていて、ほとんど薬だけもらいに病院に通っている
ような人もいる。実際、病院の受付窓口には“お薬だけの患者さん”などと記した診察券入れがあるのをよく目にする。こうした“無診投薬”は問題ではあるが、多くの医療現場で普通に見受けられる。無診であっても診察料はしっかり取られているのだが。

薬局アットマークのように、処方箋なしの医療用医薬品を専門的に扱う薬局は、実は日本初である。そのため、開業当初は多方面のマスコミにも注目された。

そのおかげで新潟県医師会に目を付けられた。こんな薬局が街に増えれば、病院にかからない人が多くなる。最近は医薬分業制が進んでいるが、かつて薬価差益は病院の重要な財源となっていた背景もある。

同薬局の伴は総本山である日本医師会に直ちに報告され、これが発端となり、厚生労働省が提出した薬事法改正案に同案件が加えられることとなった。「要指示医薬品」を廃止し「処方箋医薬品」に改めるという案だ。これにより、今までの“グレーゾーン”を大幅に狭める狙いがあったのだ。

法案が通過すれば、薬局アットマークは、事実上営業が不可能になる。


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財界にいがた 2005年6月記事
財界にいがた 2005年6月号記事

グレーはグレーのまま
改正薬事法は平成14年にスタートしているが、最後までもめにもめ、残っていたのが、この「要指示薬」の扱いである。

それが今年4月にようやく決着がついた。

「要指示医薬品」は予定通り「処方箋医薬品」として再分類されることになった。
これまで要指示医薬品に指定されていなかった半分程度が処方箋医薬品に組み入れられた。医薬品全休の3分の2程度だという。

さて薬局アットマークはどうなったか。実はほぼ影響なく営業を続けている。新たに処方箋医薬品に指定されたのは、同薬局が取り扱っていた品目の、ほんの1割というシェアだったのだ。

言ってみれば、今後は“法改正”の影に怯えることなく、法の庇護の下で営業できることになったわけである。

それにしても新潟のたった1軒の薬局の存在が、国会論議にまで発展したことを、どれほどの人がご存知だろうか。

断っておくが、小誌では同薬局のように処方箋なしで一部の医療用薬品を販売する手法(零売と呼ばれる)を否定も奨励もしない。

しかし増大する医療費の問題が国の将来を大いに揺さぶっている現状、納税者としてどう考えるかである。こうした薬局が増え、認知定着すれば、薬だけが目的で医者にかかる人は少なくなり、医療費は軽減されるのではないか。もちろん医者は今ほど儲からないが。

法改正後、同薬局を訪ね、荒居氏の話を聞いた。「県の福祉保健部医薬国保課から職員がやってきて“厚生労働省から指導するように通達が来ている”と言われました。私は“では恒常的に行われている無診投薬についてはどうなるのですか”と言い返しました。そうしたら“その件は部署が違う。医療指導係に聞いてくれ”という始末です」

荒居氏は後日、医療指導係を訪ね、無診投薬の現状を話したが、対応した職員は“全く把握していない”との返笞だったという。

聞けば、医療用品メーカーのカタログには“お薬だけの患者さん”と言かれた診察券入れが掲載されているらしい。それほど病院の無診投薬は普通になっており“把握していない”というのは理解できない。

もちろんこれを厳しく取り締まるべきかと言われれば微妙な話。医者にかかる入は年々増えているのに、医者の数は不足している。全ての患者をしっかり診察しろと言うのは現実的に無理かもしれない。これ以上、病院の待ち時間が長くなるのも、正直、うんざりだ。

薬局アットマークヘの“圧力”は、それだけではない。新潟県薬剤師会も、やはり県の医薬国保健課を通じてクレームを入れてきたという。

某県某市では、市の薬剤師会会長が開設する薬局で、一部の医療用医薬品の零売を行っている。「患者さんのメリットが大きいから」だという。


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